インタビュー記事
川本嵐 Kawamoto Arashi 「ハンガリー音楽をライフワークに」
ピアノを始めたきっかけを教えてください。
A.少し意外に思われるかもしれませんが、僕自身ピアノを始めた記憶がないんです。
家族がピアノを弾く環境が身近にあったというわけでもありませんでした。
両親が言うには、近所のスーパーに貼ってあったピアノ教室のチラシを僕がみていたそうです。
それがきっかけとなったらしく、6歳の頃から通い始めました。
いままでの略歴について教えてください。
A.中学一年生の合奏コンクールで伴奏を経験し、担任の先生の勧めもあってピアニストの講師に学ぶようになりました。それから本格的にピアノを習い始め、音楽家を志すようになりました。
その後はICU高校(国際基督教大学高等学校)という三分の二が帰国子女の普通高校へ進学して、海外を意識しながらピアノを続けていました。
大学は桐朋学園大学のピアノ専攻に進学し、卒業後はハンガリーへ4年間留学をしていました。その経験は、ハンガリー音楽をライフワークにしている現在へと繋がっています。
現在の活動内容について。
A.現在は桐朋学園大学の大学院(博士課程)でハンガリー出身の作曲家バルトークの研究をしながら、ピアニストとしても活動しています。
大学院に籍を置くことで、大学から学生の合唱伴奏などの依頼を受けることもあります。
印象的だったお仕事はありますか。
A.1つ1つのお仕事に対しては、特に気持ちに差をつけず向き合っています。
あえて挙げるとすれば、コンクールの審査員の仕事でしょうか。同じ演奏に対しても、他人と自分とでは評価基準が違っていて新鮮でした。
例えば、僕は“音楽を楽しそうに弾いている”ということに価値を感じるようなのですが、他の審査員の先生方は“技術面”を厳しく評価していたりします。
その他、性別や世代、留学経験の有無によっても評価は異なってくるようでとても面白いです。
自分が演奏を聴くとき何に集中しているのか、演奏に対する自分の信念を見直す良い機会となっています。
これからの夢について。
A.実は音楽サロンを経営するという野望もあるのですが、最終的には教育的な現場に腰を据えたいと考えています。でも、それは音大のような専門的な音楽の教育現場ではなくて、一般大学の中で芸術の分野を根付かせられればいいなと。
ハーバード大学やマサチューセッツ大学は既に、アンサンブルや作曲の授業を取り入れています。
音楽は演奏するというクリエイティブな活動の他、聴くことで時代認識や、そこに関連する人々の想いをダイレクトに感じることができます。
例えば、ハンガリー音楽の場合、王政の後、2度の世界大戦の戦火に見舞われ、近年までは共産主義の支配下に置かれました。
そういった激動の瞬間を音楽は伝えてくれます。このように音楽を通して自発的な表現と同時に、他者への理解なども深められると思います。
最終的には良い人間性を育みたいという思いがあるので、むしろ一般大学でこそやる価値があると思っています。
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この記事は2022年3月2日に取材したものです。